昇進・昇格試験の論文考11これからの論文評価の方向性

これまでを振り返って

7月半ばから掲載し始めた「昇進・昇格試験の論文考」も今回で最後を迎えました。半年前は「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が繰り返し実施され、新型コロナウイルスは終息しないのではないかと不安に駆られていました。しかし、現在では日々の感染者数がゼロの県も多くあります。その一方、オミクロン型という新たな新型コロナウイルス変異株が世界で広がっています。

2020東京オリンピック・パラリンピックは無観客で開催され、日本は史上2番目に多いメダルを獲得でき、たくさんの感動を与えてくれました。この半年だけでも様々な出来事が起こり、変化がありました。次の半年後は何が待ち受けているのでしょう。

新たな働き方の黎明期

新型コロナウイルスの発生により、働き方改革のスピードは否が応でも速まりました。日々顔を合わせなくても、いつでもどこでも仕事ができる状況が現実化してきた今、組織の在り方も大きく変わらざるを得ません

デジタルトランスフォーメーション(DX)や5G、AI、IoTなどがますます活用され、SDGs、ESG、ダイバーシティなどが組織にとって当然のごとく浸透していくものと思われます。

しかし、このようなものはツールやしくみでしかなく、それを使いこなし生産性を向上させていくのは人です。そこには品性や倫理観なども求められ、だからこそ人は自己を磨き変化し続け、成長を継続させる必要があるのです。その能力を測るひとつの方法が昇進・昇格試験の論文なのです。

ジョブ型における役割って何?

今後、ジョブ型志向が高まれば、年功序列の組織では考えられないような入社1~2年目の社員が組織全体を動かすこともあり得ます。型にはまった役割はなくなり、その人なりの強みを活かして自分から結果を出していく人材が求められていきます。業態によって一概にはいえませんが、これまでのような会社という放っておいても仲間意識を醸成してくれる土壌も失われてくる気がしてなりません。

しかし、だからこそ管理職に求められるのは、明確に目的を指し示し牽引していくこと、全く異なる強みを持った人材をチームとしてまとめ上げ、シナジーを生み出すことです。

会社という「箱」がなくなり、ジョブ型として初めて会うメンバーを、いかにバラバラになることなく目標達成に導くか、管理職の手綱さばきがますますキーになっていくことでしょう。

その一方、第一線で活躍する人材ばかりが重宝されるとは思いません。

  • 陰で寄り添って支える
  • 誰も行わないようなことを補佐する
  • 目に見えないところで縁の下の力持ちになる

こういった人材も必ずや求められるはずです。派手な能力ばかりに目を奪われることなく、いかに人材を見極めていくかも重要になります。多様な人材の心の内をどう判断するか、それを見いだすために論文試験が役立つのです。

これからの時代の論文試験の設計

ジョブ型となって従来の部長、課長、主任などの役割に変化が生じるのであれば、当然そのようにヨコに並んだ役割ごとに評価するという今までの評価の仕方にも変化が求められます。タテの組織、事業ごとに論文試験をしてみるといったことにも意義が出てきます。

例えば、主任という括りで論文を書くのではなく、部長・課長・主任に同じテーマでタテ一線に論文を書いてもらえば、新進気鋭の若手のほうが会社を引っ張っていくのに相応しいという結果が見えるかもしれません。

 そして、社内という狭義の概念でなく、社会という広義の概念が重要になってきます。会社内の問題や課題という小さな世界のことに閉じ籠ることなく、社外、社会、環境の問題解決を問うような論文試験があってもよいかもしれません。

あるいは異なる会社同士の課長を対象とし、同じテーマで論文を競い合うのも有効です。これからの時代を見据え、価値ある壮大なテーマで各々のお客様で論じることに挑むのは興味深いものがあります。

世の中を自分から変えていく、もしくは守っていくために自分自身はどのような役割を担う人材となるうか、そう考えると、今後の論文試験に対してワクワクする気持ちが湧いてきます。

 ここまで約半年にわたり、お付き合いいただき、心よりありがとうございました。厚く御礼申し上げます。これからもオープンイノベーションのスタンスで参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

※ 【お願い】当コラムの内容に関する個別のご意見やご質問に対しての回答は、基本的にいたしかねますので、あらかじめご了承くださいますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。