昇進・昇格試験の論文考9「フィードバックコメント」について(3)

期待する役割を伝達する

前回は「育てる」をキーワードに「改める」をお伝えしましたが、今回は「期待する」について考えていきます。コメントでは、最後をよく次のように締めくくります。

「~することが望まれる」
「~したいところである」
「~が求められる

すなわち、期待する文言で終わります。

昇進・昇格の論文試験では、対象が部門長、管理職、主任、入社後3年目、新入社員など、各々のクラスで期待される役割は異なります。部門長クラスの人材が実務的なことばかりを記していたり、管理職クラスが目先の問題解決に汲々としているようでは物足りません。そこで昇格後に期待されている役割は「そうではなく、こうですよね」との視点からコメントしています。

つまり昇進・昇格試験の論文は、各々のクラスで異なる、求められる役割を踏まえて評価を実施するのです。

受験者は会社全体の鏡

また、論じられた取り組み内容が、昇格後でなくても(今の立場でも)できるようなものでは不足感があります。良い方は、例えば次のように役割の違いを明確にした表現をされます。

「これまでは主任として○○○○○○○○が求められていたが、今後、管理職となれば○○○○○○○○○○の役割が求められる。したがって、中期経営計画達成に向けて他部門の管理職と連携を図り、まずは上期までに○○○○○○○○の結果を出す」

すなわち、これまでとは異なる役割を踏まえ、マイルストーンを設定するような発想をします。こういった発想をされる方が多い組織は、恐らく管理職として良いお手本が身近なところに存在しているのだと思われます。お手本が身近に存在することは、将来ありたい姿をイメージしやすく、組織としても強みとなります。

一方、あまり良いイメージが持てない組織は、以下のような論文に陥りがちとなります。

  • うちの部署は、仕事が組織でなく個人についてしまい属人的であり、メンバーが今何をしているかさえもわかないため、せめてコミュニケーションを活性化させたい
  • どうもうちの会社は年功序列で職位が高い人の意見ばかりが通りやすいので、せめて若い我々の意見も受け入れられるように努めていきたい
  • 我々の事業部は固定観念が強く、新商品開発が長年できていないため、付加価値のある商品をチームで話し合っていきたい

すなわち、昇格後の役割どころではなく、せめてこうしていきたいという願望どまりとなってしまいます。

その意味で昇格後の自分自身を鮮明にできるか否かは、実は対象者だけの問題ではなく、会社全体としての姿勢が問われる問題でもあるのです。

次回は12/16(水)、依頼を受けた企業様ごとに論文全体の所感をまとめる「総合講評」についてご紹介いたします。

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