昇進・昇格試験の論文考1「論文テーマ」について(1)

今回と次回で「論文テーマ」について、実際によくありがちな傾向も含めてまとめてみます。
たかが論文テーマと捉える方もいるかもしれませんが、これは昇進・昇格試験の論文において最も重要な鍵を握っているといっても過言ではありません。弊社でお客様にご提案している論文テーマ例を以下に掲げます。これは管理職昇格試験のものです。

論文テーマ例

当社の経営方針を踏まえ、現在、あなたの部門にはどのような課題が存在するか。また今後、組織の中枢を担う昇格後のリーダーとして、あなたは自部門の課題解決に向けて、いつまでにどのように行動していくか。具体的に論述しなさい。

このテーマでは、まず「当社の経営方針」が何を意味するのかを具体的に提示することが望まれます。「当社の経営方針は」と記すのみで、その中身に触れていないものは、たいてい抽象論で終わります。「あなたの部門」も同様です。「私の所属部署は」と記すのみの論文を非常によく見かけます。冒頭で所属部署と氏名を明記しているのだから、わかるだろうという発想は安直です。
所属部署がどこでいかなる役割を担っているのか、全社的に見てどのような位置づけにあるのかを明確にする必要があります。全社的に見るのであれば、自社が置かれている環境にも触れることが求められます。
そして、提起した「課題」が現状に鑑みて理にかなっていることの背景や裏づけをとると納得感が高まります。論文テーマの1行目だけで、これだけのことを想定することが求められるのです。

次に、「リーダー」の捉え方ですが、単なるリーダーでは物足りません。現在とは異なる一つ上の管理職としてのリーダーの役割を想定することが大切です。また、「課題解決」として今後の施策を提示するにとどめず、自らの「行動」にまで言及できなければ有効ではありません。
よく施策を一方的に記すのみで、いったい誰がそれを行うのかが不明なものを見受けますが、それでは第三者的です。評点が高いものは「私は」という主語を用いて率先垂範していく姿勢がよく表れているものです。ここで、「具体的に」展開することができるかが重要になります。現状の説明に重きが置かれているようでは腑に落ちません。

もう1点、ポイントとなるのは「どのように」という文言です。ともすると見落としがちですが、これは、どのように実行していくのかを問うています。よく実施することを次々と宣言するのみのものがありますが、どのように実施していくのかのプロセスが欠落していては疑念を抱きます。そして、さらにポイントとなることが「いつまでに」です。論じた施策に計画性が備わっていると臨場感が高まります。
また、施策の中身も大切です。個人的なスキル向上や実務レベルの施策では、管理職として不十分です。昇格論文試験という場で管理職の役割にふさわしい取り組みを描くことができるかは、日頃からの問題意識の高さで全く異なってきます。「昇格した場合には」などと、仮定的な表現では心もとない印象が否めません。

次回は7月30日(金)、昨今の論文テーマの傾向についてご紹介いたします。

※ 【お願い】当コラムの内容に関する個別のご意見やご質問に対しての回答は、基本的にいたしかねますので、あらかじめご了承くださいますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。