昇進・昇格試験の論文考10「フィードバックコメント」について(4)
「総合講評」ってどんな意味があるの?
今回は、「総合講評」についてお伝えします。総合講評とは、全ての論文評価が終了した後に全体としてどのような印象があったのかをまとめた書面です。主に人事部にお納めする、お客様の会社全体に向けたフィードバックコメントといえるものです。総合講評では、他社比較の視点も交えてお伝えします。それは年間約60社の昇進・昇格試験を実施している弊社ならではの視点でもあります。
昇進・昇格試験の論文評価を始めた頃は、総合講評の価値を測りかねていたのですが、人事部のお客様のところへご報告に伺うようになり、直接Face to Faceでお目にかかり、お話を伺うことによってその価値を実感するようになりました。
例えば、うちの会社の管理職のレベルは他社と比較してどうなのか、全体としてどんな傾向があるのか、人事部の方や役員の方は非常に気になさいます。お客様は他社のレベルなど知る術もないので、それをお伝えすると安心したり、対策を練る必要性を認識したりします。
どのようなことを報告するのか
その際に冒頭で必ずお伝えするのは言葉があります。
「これからお伝えする所感は、あくまで今回の論文のみから感じたものですので、ご了承ください」
その意図は、一人ひとりの論文のみから、必ずしもお客様の全てがわかるわけではない、ということです。ただ、30~50名を読めば、何かしらの傾向が見えてくるものです。総合講評は、そういった全体に関する印象をお伝えするのです。その例を以下にいくつか挙げてみます。
- 総じて前向きな発想をしているのは良いものの、今後の施策が一様に具体的ではありません。
- 担当業務のことに視野が限定されているものが多く、他部門に無関心で全体最適の視点が希薄といえます。
- 自社に対する帰属意識やエンゲージメントが高く、危機的な状況にあっても建設的な姿勢が伝わってくるのは良い点です。
- 自分の業務しか意識しておらず、会社全体を取り巻く環境変化に意識が届いていないものが少なからず見受けられます。
- 全体として問題意識が高いのは良いものの、設問の要求に対応できていないものが多いのは要改善です。
- 人材育成に対する関心を寄せるものが多いのは好感が持てるのですが、対策が一般論となる傾向があります。
- メンバーの育成に意欲があるのは良い一方、上司の気配が感じられないのは違和感があります。
- 改革や改善への感度が高く、前例踏襲でないことを成し遂げる意気込みが多くのものから伝わってきます。
- 課題への感度が高いのは良好です。しかし、総じて心情的なことや抱負ばかりを記すにとどまる傾向があります。
- 自社を取り巻く環境変化が、新型コロナウイルスによるテレワークの推進といった身の回りのことや、担当業務に関係することに限定的となっているものが多く存在します。
お客様は、受験者個別の結果にとどめず、組織全体として見た場合にどうなのかをまとめると納得されます。また、おべっかやお世辞を告げたりするのではなく、傾向をズバリと伝えるほうが喜ばれるものです。お客様にとって、外部から客観的に見た傾向を得られることは貴重なのです。
次回は12/24(金)、いよいよ最終回です。これからの論文評価の在り方について考えます。
※ 【お願い】当コラムの内容に関する個別のご意見やご質問に対しての回答は、基本的にいたしかねますので、あらかじめご了承くださいますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。