株式会社ユーディージャパン

人材教育・出版・ユニバーサル環境の推進

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研修事例紹介
手話で行う 新入社員研修

UDジャパンでは、さまざまな特性をもつ人が最大限に能力を発揮できるよう、ご依頼主の目ざす落としどころに応じた研修設計、研修手法をご提案いたします。ぜひ一度ご相談ください。

実施情報
内容 1日目:ビジネスマナーの基本
2日目:仕事の基本
3日目:コミュニケーション
場所 株式会社UDジャパン 研修室
〒108-0075 東京都港区港南2-12-27
講師 大瀧由美子・高桐尊史

ビジネスマナーの基本
1日目 10:00〜17:30
講師:大瀧由美子 参加者:8名

大瀧講師による、手話で行う新入社員研修の模様です。
手話で行なっているためほぼ無音です。


今年は机を除いてイスだけで弧を描いた。そのためか、お互いのコミュニケーションが活発であった。


正しい姿勢を確認しているところ。


「聞こえの名刺」の写真を撮る前に、皆で笑顔の練習。この頃から、次第に肩の力が抜けてきた様子。


報告書の書き方で、悪い報告書を見て、ペアで書き直す演習を行った。初めから、正解(箇条書きにする、私感を削る)にたどり着くことができたペアはいなかった。


お昼ご飯は、お弁当を注文したり、1階のコンビニエンスストアで購入したりして、研修室で食べた。みんな食べ終わっても席にいて、たくさんの情報交換を行っていた。


報告書を書く前に、紙の大きさの説明。1枚の紙について、みんなでサイズをあてる。A3とA4に答えが分かれたが、渡された紙のサイズはB4であった。

今日の研修の受け方
ロールプレイ、ペアワーク、 発表などの基本的なルールを説明。メモ不要であることも伝えた。
自己紹介と挨拶
緊張のためか、総じて暗い挨拶。
名前・社名・この研修に望むこと、の3点を話すように指示。プラスα はあまり言えなかった。
なぜ"働く" のだろうか?
いままで意識していなかったように見受けられる。納めた税金で街が作られることに驚いた様子を表す参加者もいた。
出社から退社までのマナー
遅刻などの基本マナーは全員が理解していた。しかし、昼休みの過ごし方や退社後のプライベートな時間にも、会社の規範や社会のルールを守ることが求められることを知ると、全員が驚いた様子だった。
自分から伝える(聞こえの名刺づくり)
親や先生が、何も言わなくてもサポートしてくれた学生時代とは違い、会社では自分から言わなければ伝わらないことを教えた。また、チェックリストを使って、聞こえの状況や求める配慮を名刺にした。完成した名刺を渡すのは翌日。
これについて、一つ懸念が残る。新入社員でない場合、周囲に「補聴器をしているのだから聞こえているだろう」と勘違いをされ、配慮してもらえないなどの経験があるので、「補聴器をしていても、音がするだけで会話は聞こえません」と書く人がほとんどだ。しかし、今回の参加者は新入社員で、聴者のなかで過ごす経験が浅いのか、「補聴器をつけているので聞こえます」という内容が多かった。しかし、「マスクNG」の併記もあり、「音が聞こえます」=「周りは"会話ができる" と思う」ということについて、まだ認識していないようだ。
周囲の人が、この名刺で誤解しないことを願う。
指示の受け方
基本的な知識を伝えた。復習と実践は3日めに行った。
叱られ方
期待されているから叱られることに驚いた様子だった。
仕事の報連相
まず、報告・連絡・相談の概念から説明。皆、十分な知識や経験があったようだが、それぞれが曖昧で区別がついていなかった。状況の違いや、ポイントの違いを説明した。
報告書
ここでは簡単に、一般的な報告書の書き方を学習し、今日の研修報告書を書いてもらった。
■ 音がない研修室 ■

この研修を見学する聴者がまず驚くことは、音がしないことです。講師は手話で講義を行い、基本的に発話しません。狭い部屋に10人以上いるのに、研修は無音で進んでいきます。ここでは手話ができない人が障がい者となります。

この研修で手話ができない聴者が感じる「自分だけがわからない」感覚は、聴覚障がいのある社員が職場で日常的に感じている不便さと似ています。UDジャパンが、「どうぞ見学にお越しください」とオブザーバーの方を誘う一番の目的は、音がない(手話がわからない聴者がバリアを受ける)という状態を、ほんの少しでも体感してほしいからです。聞こえの障がいは目に見えないので、忘れられがち。しかし、体感したことは簡単には忘れません。聴覚障がいのある社員が、職場でどのような状態にあるのか、忘れないでほしいのです。

仕事の基本
2日目 9:50〜17:20
講師:大瀧由美子・春山礼子 参加者:8名


2日めは、「書く」ことが多いので、教室スタイルでス タート。午後からは、昨日同様のイスのみとした。


添削されて戻ってきた報告書。


名刺交換。名刺を持つ手元やお互いの距離間を説明。


順番に名刺交換。非常に盛り上がっていた。


会議についてのディスカッション:聴覚障がい者は、複数人と会話することが難しいが、どのようにしたら会議に参加できるのか、2グループで話し合った。


お互いに打ち解けて、おしゃべりが増えてきた。講師を見ていない間は、説明を見ていないので頭に入らない。しかし、目をそらさずに、ずっと講師を見続けるのもくたびれる。講師はこの特性を知っているので、同じ説明を2〜3回繰り返して進める。

報告書の添削
ここは大瀧氏が通訳を務め、講義は添削した春山が担当。研修生自身が昨日書いたものを、名前を隠してパワーポイントで説明した。自信があった者が多かったようで、予想以上に赤くなって返ってきた報告書に、少し凍り付いている様子が伺えた。日時や場所は、資料を書き写せばよいが、「所感」では、ほぼ全員が、「〜と思った」「〜と思った」など、同じ文末を繰り返しており、まだまだ語彙の少なさが感じられた。
敬語
敬語については、とてもよく理解している者と、まったく初めて触れる者と、身に付き方が大きく分かれた。内・外の文化は、よく理解しているようであった。
ビジネス文書
文章全般について聴覚障がい者が持ちがちな『長い文章が優れた文章』などの誤ったイメージを解説した。
メールの基本
午後一番であったためか、皆、眠そうだった。そこで、聴者と比べるとメールのやり取りを、早めに終わらせる方が多いので、返信のマナーをしっかりと伝え、あとは文例を多く紹介したスライドの資料を活用することを伝え、少し早めに切り上げた。
名刺交換
紙製の名刺入れと聞こえの名刺を使用して、数回実習を行った。実際に動いてみて、理解ができたようだ。みんな楽しそうに行っていた。
会議について
多くの人が話し合う会議は、聴覚障がい者にとってハードルが高い場面である。どんな配慮をしてほしいか、2グループに分かれてグループワークをした。
コンプライアンスを学ぶ
ショートストーリーを使用して、職場にありがちなコンプライアンスに関する問題について学んだ。また、聴者にも手話を理解する人が増えてきていることと、公共の場で情報漏えいの可能性があることを知り、あらたな気づきがあったようだ。
メンタルヘルス
ショートストーリーを使用して、メンタルヘルスの気づきを伝えた。
報告書
今朝の反省をもとに、今日の研修報告書を書いてもらった。昨日よりも、倍以上の時間をかけて記入していた。

コミュニケーション
3日目 9:50〜17:15
講師:桐尊史 参加者:8名

高桐講師による、手話で行う新入社員研修、最終日の模様です。
実際に名刺交換を行ったり、大切なビジネスマナーの1つである「席次」について学びました。


昨日の復習から開始した。聴覚障がい者は情報に不明点があると気持ちが引っかかってその次の情報が抜けてしまったり、たまたま目をそらしていると情報が落ちることが多い。何度も繰り返し伝えることが大切だという。


連絡の受け方のロールプレー。切手を買って貼るように伝えた。復唱はできたが、切手の金額を聞き忘れていた。時間の関係で2名に絞って、実施してもらった。


1日め、2日め、と時間を追うごとに、イスの間隔がだんだんと狭くなってきた。


ホワイトボードに映し出された部屋に、マグネットで上位者から番号順に座る位置を置いていく。置いた後は、なぜそのように考えたのかを説明した。


総仕上げとして、2社間での名刺交換、着席、お茶までをひと通り順を追って行った。

今日の研修の受け方(復習)
第1日めの内容だが、ろう者の講師によって、もう一度解説。講師が19年、聴者の中で働いてきたことなどの体験話をすると、場が大きく引き締まったことが印象的。
社会人と学生の違い
学生はテーマと相手を選んで話せるが、会社では不可能なことを説明。演習を通して、納得感が持てたようであった。
職場のコミュニケーション(復習)
報連相・指 示命令の受け方・叱られ方の復習。指示の受け方は、2名ほどにロールプレーを行ってもらった。
歩み寄りのコミュニケーション技術
参加者が、これまで聴・ろうのどちらの文化のなかで暮らしてきたかによって、大きく理解度が分かれた。命令・依頼・禁止などの際に、聴者はクッション言葉をつけて、疑問否定形にする必要があるなど、ろう文化にはない常識に、驚きながらも、みんな熱心に学んでいた。
また、すぐに、「いいえ」と言ったり、「はい」「いいえ」の後に言葉を継がないと、聴者が違和感を覚えることなどを学んだ。
席次
ホワイトボードに、和室や会議室、タクシーなどを映し出し、番号や役職名が書かれたマグネットを貼っていく。正解率は低かったが、みんな熱心に取り組んでいた。
他社訪問・来客応対
まず、役職などが記されたダミー名刺を配り、2社に分かれた。ほぼ全員が係長、課長、部長などの上下関係を知らなかったため、組織や役職の説明を行う。そして、訪問する側、される側で、役職順に複数・同時の名刺交換、席次を意識して座る、お茶を出す、などの実践を行った。会社を変えて、2回の実施。
アサーション
ペアで人事の話し合いをする演習。時間の関係で、各自のアサーションタイプはチェックできなかったが、解説・説明はしっかりと行った。皆、非常に興味深く聞いていた。
「3年後になりたい自分シート」記入
3年後になりたい自分をイメージし、そこに到達するように、伸ばしたい点や改善点を見い出すためのシートを配付。時間がなく本人が持ち帰りとなった。担当者から提出を求められてもよいように、記入を済ませて保管しておくように伝えた。
■ 同じ単語でも意味が違う ■

手話と日本語は完全に一致していません。同じ単語でも、ニュアンスが異なる場合もあります。右のスライドの「まぁまぁ」や「マシ」は、特に日本語とは差があり、"ろう文化"では、「なかなか良い」「とても良くなった」という意味を持ちます。(ろう文化に合わせ、スライドにパーセントで表しました。)

今回も、「まぁまぁ」や「マシ」と言ったときの上司の満足度を「どのくらい?」と聞くと、ろう文化の感覚を持っている人は、「70%」、「80%」と答えます。続いて、聴者の感覚を示す赤い棒グラフ(30%、40%)が出されると、驚いた顔をします。さらに、こう言われた場合を想定し、黄色のふきだしのような対応を指導しました。

 

講師

大瀧 由美子(おおたき ゆみこ)
手話通訳者、産業カウンセラー、盲ろう通訳介助者、YYPJ代表
現在、手話通訳者として、手話を使用したコミュニケーションの提唱、手話通訳者の派遣を啓発。
産業カウンセラーとして働く方のメンタルヘルス援助を行う。
高桐 尊史(たかぎり たけし)
NEC関連会社勤務を経て、手話講師。「NHK聴覚障害者の時間」など多数出演。現在、企業のための聴覚障がい者研修や手話指導を行う。
手話監修『会社で使う手話』(UDJ)。

研修生アンケート

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こんな特性にはこんな配慮で 障がい別の研修上の配慮

UDジャパンが行う障がい者向け研修のノウハウを、少しですがご紹介します。研修内容によって配慮の内容が異なりますので、ここでは「新入社員のマナー研修」をイメージした場合の配慮を想定してみました。社内研修だけでなく、日常業務や長時間の会議などでの参考にしていただければ幸いです。

■ 肢体障がい者の研修 ■

基本的には、障がいのない社員と同じ研修を行います。車いすのまま使用できるトイレがあるかどうか確認し、休憩時間は長めに設けます。
基本的にアクティビティ研修にも参加していただきます。手を使うことや歩くことが必要な場合、周りがどのように手助けをしているか/できるか、本人が周りにどのような働きかけができるか、といったことも観察対象としています。

■ 視覚障がい者の研修 ■

サポーターを本人の隣に配置し、「Aさんが発表します」、「講師がお辞儀の見本を見せています」など、視覚情報を音声にして伝えます。講師は、スライドなどの墨文字情報を、指し示すだけではなく、読み上げるとともに、「これが」「そこに」などの指示語を使わず、具体的に言うように気をつけます。
配布資料は、パソコンの読み上げソフトが使える形式のテキストデータでお渡しします。事前渡しの会社が多いようですが、情報提供のタイミングを他の方と同じタイミングにしたいと考え、UDジャパンでは研修後に渡しています。

■ 聴覚障がい者の研修 ■

本人の聞こえの様子によって配慮は異なりますが、基本的に、手話通訳者の手配が必要です。手話を使わない聴覚障がい者も多いので、その場合は、PC筆記やノートテイクを行います。
講師は、後ろを向いて話さない、受講者が書いている間は研修を進めずに待つ、などの配慮をします。

■ 精神障がい者の研修 ■

精神障がいの種類によって異なります。うつなどの精神疾患の場合は、休憩を多くとるなどして、疲れにくい状況づくりに配慮します。発達障がいの場合は、人それぞれですが、文字/音の理解の仕方に偏りがあることが多いので、文字だけでなく読み上げる、言葉だけでなくスライドや資料などで文字としても情報を渡す、などの工夫が必要です。

事前のヒアリングによるカスタマイズ
ヒアリングシート

UDジャパンの研修は、1回、1回、カスタマイズを行います。
「うちはちょっと状況が違うから……」と考えずに、まずはお声がけください。
事前にお打合せをさせていただいたり、右のようなヒアリングシートをご提出いただき、合理的配慮を行ったりします。

担当及び連絡先

株式会社UDジャパン 春山礼子
電話:03-5769-0212/FAX:03-5460-0240
e-mail:info@udj7.com

UDジャパンの研修一覧
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