株式会社ユーディージャパン

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特例子会社設立マニュアル 見本用テキストデータ

視覚障がい者のためのテキストデータです。一部ですがご紹介いたします。本書をご購入していただいた方でご希望の方に、本書すべてのテキストデータのCDを添付しております。ご注文時にCD希望とお知らせください。

以下、見本用一部抜粋テキストデータです。

ケース1
PPパートナーは、中堅家電メーカーPP電機の特例子会社で、今年で設立4年めである。社長の林田のもと、知的障害者が65名、視覚障害者2名、聴覚障害者3名、内部障害者一名、親会社からの出向社員9名で構成されている。

 主な業務は、機械化が難しい少数の部品や特注品などの梱包作業だ。内部障害を持つ営業の江藤の活躍で、親会社以外の会社からの受注に成功したり、知的障害を持つ絵の上手な山内が、親会社配付物のイラストの仕事を受託したりと、仕事は増えてはいるが、金額的には微々たるものであった。

 そしてこのPPパートナーは、創立以来、まだ一度も黒字を出したことがない。社長の林田はまだ若手で、子会社設立の経験を買われて親会社からこの子会社に出向してきたが、特例子会社で利益を出すことの難しさを痛感していた。
同じような業務を行うライバル社にS社がある。包材メーカーの子会社で、包材のバリエーションを強みにしている一般企業だ。スピードもあり、量もこなせ、そのうえ今年から、運送業も始めた。親会社はPPパートナーの設立目的を理解してはいるものの、S社に発注することが多くなっていた。
問題は売上げだけではなかった。同じグループ会社のIT関連会社が別会社を吸収合併して社員が増えたことを受け、PPパートナーは特例子会社としてさらに23名の障害者雇用を求められたのだ。にもかかわらず、最近立て続けに3名の社員が辞めていった。
ケース1終わり

1 特例子会社が抱えがちな問題

 障害者雇用に課題を抱える企業が、その対応策として特例子会社の存在を知ったとき、多くの企業の関心は、その「設立」に向くのではないでしょうか? しかし、設立してしまえば、それで終わりではありません。特例子会社といえども企業です。企業は、利益を上げ、存続をしていく責任があります。
では、一般企業と特例子会社が違う点はどこでしょうか? 特例子会社には、一般企業とは違い、次のような二面性が挙げられるでしょう。
一つは「特例子会社の使命は、障害者の雇用と育成・定着にある」という面。そしてもう一つは、「特例子会社は、独立した企業法人である」とした一般企業と同じことが求められているという面です。

【まるいち】特例子会社の使命は、障害者の雇用と育成・定着にある
特例子会社に求められる使命とは、重度の障害者を社員として迎え入れ、一人ひとりが持つ障害に配慮しながら、社員の能力を最大限発揮できるような職域を確保することです。これが特例子会社独自の使命であり、特例子会社設立の趣旨でもあります。

【まるに】特例子会社は、独立した企業法人である
特例子会社は一個の独立した企業法人です。そこには多くの社員が働き、その背後には家族の存在もあります。とすれば、当然、企業として自立するためのプランや、利益の追求のための努力がなされなければなりません。それは一般の企業と何ら変わることはありません。

 ところがこの両立は、簡単なことではありません。もしあなたが、特例子会社に何らかの形で関わっているならば、次のチェックリストを読んで、該当する悩みや類似する問題点にチェックを入れてみてください。

チェックリスト
親会社との問題点に関するチェックリスト

親会社から求められる売上額に達しない
親会社から求められるだけの障害者を雇用できない
人的サポート、業務的サポートなど、親会社からの支援が不足していると感じる
親会社の人員計画に直接的な影響を受ける

親会社との問題点に関するチェックリスト終わり

内部の問題点についてのチェックリスト

社員が定着しない
社員の能力が低い
志気が上がらない/モチベーションが低い
社員同士の人間関係のトラブルが多い
健康管理など、管理職の負担が大きい

内部の問題点についてのチェックリスト終わり

業務の問題点についてのチェックリスト

仕事が少ない/多い
仕事が減っている
納期・品質・コストなど、いずれも課題がある
付加価値の高い仕事が用意できない

業務の問題点についてのチェックリスト終わり

チェックリスト終わり

 ほんの一部ですが、ここで取り上げたものは代表的な課題・問題です。しかし、これらはあくまでも表面的なものにすぎません。
事例のPPパートナーも、いろいろな問題を抱えています。しかし、解決に向け、「どうしたらよいのかわからない」、「親会社が何もしてくれない」、「社員が動かない」と実は何も具体的な行動をとっていない場合が少なくありません。

コラム
トライアル雇用
初めての障害者雇用や重度の障害者を受け入れるとき、その活用に不安で雇用を躊躇している企業は、トライアル雇用(試行雇用)という制度が利用できます。
利用できる企業は、労働者災害補償保険(労災)、雇用保険、健康保険、厚生年金保険等に加入している、あるいはこれらと同様の社員共済制度を保有していることが必要となります。また、労働基準法等の法令を遵守していなければなりません。トライアル雇用の対象となる障害者も、ハローワークに求職登録していることが条件となります。
トライアル雇用では、ハローワークからの紹介により、最長3カ月の有期限で雇用契約を交わし、その人が業務への適性をもっているか、業務遂行が可能か、などを実際に見極めることができます。そして、3カ月以内に、本採用するかどうかを決めることができます。もちろん、3カ月経ったとき(あるいはその前に)雇用が見込めないと判断したら、雇用契約を終了させることも可能です。逆に、途中でトライアル雇用を中断して正社員として迎え入れても構いません。トライアル期間中は、雇用率にはカウントされませんが、本採用になった場合は、トライアル雇用が始まったときにさかのぼって、雇用率をカウントします。

 トライアル雇用は障害者にとっても、企業の求める適性や能力・技術を実際に知ることができるので、採用後の安心感が得られ、もし難しいと感じたら、辞退することも可能です。この間、企業が一定の要件を満たしている場合は、国から奨励金の支給を受けることができるため、雇用にかかる一定の負担が軽減できます。

 トライアル雇用の年間予算は、自治体によって異なりますが、非常に人気の高い制度であり、予算枠も決められているので、希望する企業は早めに申請することがポイントです。
コラム終わり