株式会社ユーディージャパン

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障がい者雇用促進のための119番 見本用テキストデータ

視覚障がい者のためのテキストデータです。一部ですがご紹介いたします。本書をご購入していただいた方でご希望の方に、本書すべてのテキストデータのCDを添付しております。ご注文時にCD希望とお知らせください。

以下、見本用一部抜粋テキストデータです。

p.2
はじめに
企業の人事の方々とお話をすると、「障害者の雇用が年を追って難しくなってきています」との声をよく聞くようになりました。
障害者の雇用促進に関する法律の改正により、精神障害者の雇用が雇用率に算入できるようになったのは、二〇〇六年四月です。これは、雇用率の改善に苦労する企業にとっては朗報です。しかし、その一方で過去の経緯を見ると、近い将来、精神障害者の雇用が義務化され、それに合わせて法定雇用率の引き上げもなされるでしょう。そうでなくても法定雇用率の達成に日常的に苦労している企業側からすれば、また雇用率が引き上げられるのかと、恨みにも近い声となっていきます。
それでも民間企業の障害者雇用率は少しずつ改善されています。そして『日ごろの指導が奏効した』と判断した行政サイドは年々指導を強化します。障害者自立支援法の存在を考えれば、この指導強化は一過性で終わるものではありません。
企業サイドでも、障害者雇用の理解が進み、ヘッドカウントに直接リンクする形での要員管理も浸透してきました。この引き上げられたハードルに見合う障害者の確保が叶うのであれば問題ありませんが、そのように簡単には事は運びません。それが冒頭の言葉となって発信されるのでしょう。
採用市場が劇的に変化した今、企業における障害者雇用のあり方も抜本的に見直す必要がありますが、それには相応の知識や専門性が必要です。この専門性を求めて多くの企業が動き始めた今、本書の果たす役割は大きいものと確信しています。本書を機に、多くの人事に携わる方々が障害者の雇用を前進させていただくことを願ってやみません。
秦 政
はじめに終わり

 

Question 1
企業はどうして障害者を雇用しなければならないのでしょうか?
働かなくてもいいように、福祉で生活を支えたり、役所などで雇用すればよいのではないですか?
Answer
企業が障害者を雇用しなければならないのは、企業には社会的責任があるからです。社会は完全なものではなく、さまざまな未解決な問題を抱えています。
障害者雇用もその一つです。行政も前向きに取り組んではいますが、民間企業には、行政が持つことが難しい応用力があり俊敏性に優れ、個人の持つ技術や能力を形にできる力があります。また、少子高齢化による労働力の不足、ノーマライゼーションの推進やダイバーシティの広がり、法定雇用率達成の義務なども挙げられます。
社会を構成する一員として、企業は障害者雇用をする責任を担っており、こうした責任を果たしている企業は社会から認められ、次世代を生き抜く力を蓄えていけるといえるでしょう。

コラム
ノーマライゼーション
「障害者は働かなくても福祉で生活を支えればいい」、「公共的な組織で雇用すればいい」……。でも『障害者』ではなく『自分』だったら、それで納得できるでしょうか?
多くの企業退職者が言います。「年金があるから給料はいらない/半分以下でいい。でも、会社で働き続けたい」と。なぜなら、企業で働くということは、社会への貢献であり、社会とのつながりだからです。それが、生き甲斐なのです。
多くの若者が語ります。「○○社で働きたい」、「将来○○になりたい」。好きな職業につき、職種や会社を選びたいのです。
障害を持っていてもいなくても、その心は同じです。
ノーマライゼーション(normalization)とは、障害があってもなくても、誰でも住みたい場所に住み、働きたい仕事に従事するチャンスがあり、社会生活を共にするのが当然なことであり、本来の望ましい姿であるとする社会理念の一つです。
コラム終わり

欄外説明
民間企業は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、一・八%(*常用労働者五十六人に対し一名)以上の身体障害者、知的障害者、精神障害者を雇用しなければならないとされている。この%を、法定雇用率という。
*常用労働者とは、@期間を定めず雇用されている労働者 A一カ月を超える期間を定めて雇用されている労働者 B前二カ月の各月に十八日以上雇用された労働者をいう。
欄外説明終わり

Question 2
白い杖を持っていないのに視覚障害者だという人や、片足が短くて杖をついているのに肢体障害者ではないという人がいます。いったい障害者とは、どんな人のことをいうのですか?
Answer
「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、『身体障害、知的障害、または精神障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、また職業生活を営むことが著しく困難な者』を障害者の定義としています。「障害者手帳」は、本人が希望し、必要な手続きを経て交付されます。そして、この交付を受けてはじめて、年金や医療費などの公的支援を受けることができるのです。白杖を必要としない弱視の人も、生活に支障があるならば手帳の支給を受け、「障害者」となれます。企業が障害者雇用の対象とできるのは、この「障害者手帳」を持っている人です。
片足が悪くても、仕事に差し障りがなかったり、障害者と認定されたくない人は、手帳を取得しない場合もあります。この場合、企業は障害者としてカウントできません。

コラム
ダイバーシティ
さて、あなたは「健常者」でしょうか? 目が悪くてコンタクト/眼鏡を外したら、転んで足にギプスをしたら、日常生活に支障はないでしょうか? また、耳が遠くなったり目が悪くなるという、加齢による障害は、毎日少しずつ増していくものです。
障害者と健常者の境目は、くっきりとしたものではありません。誰もがある部分は障害を持っています。また、環境(肢体障害者のためのエレベーターや視覚障害者のための音声放送など)が整えば、障害による不便さはありません。
一人ひとりが、身体的条件、人種、性別、年齢、宗教・信仰などの属性にこだわることなく多様性を受け入れ、能力を活かしていく、この考え方を「ダイバーシティ」といい、特に企業の人事に携わる者にとっても、適切な配属や能力開発に、ぜひ持っていてほしい極めて大切な感性といえるでしょう。
コラム終わり

欄外説明
障害者手帳は障害を証明するだけでなく、より積極的に社会参加ができるよう、公的支援を受けるための証明書的な役割も担っている。障害者手帳の種類は、身体障害者手帳、知的障害者の手帳、精神障害者保健福祉手帳の三種類があるが、各都道府県により、その名称はさまざまである。
欄外説明終わり

Question 3
はじめて障害者雇用に取り組むことになりました。担当を任されたものの、具体的に何から始めたらいいのかわかりません。
Answer
具体的に何から取り組むかは、状況や業種によって異なります。まず、近くのハローワーク(公共職業安定所)に相談してください。就職希望の障害者の紹介や採用に関するいろいろなアドバイスを受けることができます。
また、採用の支援だけではありません。採用した障害者の教育支援、作業を容易にするために必要な設備や機器のための助成金を支給するなど、障害者雇用に関わるさまざまな手続きの窓口、職域開拓、雇用管理、職場環境整備などの相談受け付け、トライアル雇用、ジョブコーチ、職業訓練など、採用後の運営のための支援など、さまざまな就職後のアフターケア、フォローアップを行う公的支援機関です。
これからの障害者雇用全般にわたって欠くことのできないパートナーとなりますので、相談や質問があれば、気軽に尋ねてみてください。

コラム
ハローワークに行ってみた!
一番近いハローワークは歩いて五分のところ。総合受付で「障害者を募集したいのですが……」と言うと、窓口を教えてくれた。窓口に行くと、「はじめての障害者雇用ですか?」、「正社員としてですか?」など次々に質問された。求職者一覧を見せてもらったけれど、等級やらよくわからない。「来月に○○会館で就職面接会を行いますので、ブースを出してみますか?」と提案された。「正社員募集には多くの人が集まるので、ブースに二人は必要でしょう。会社案内のパンフレットは二百部用意しておきましょう」。採用条件を言っただけで、何人の人がブースに来るのかの予測ができるなんてさすがプロ、と感心しながら、「面接会の参加は上司に聞いてみます」と資料をもらって会社に帰った。
コラム終わり

Question 9
精神障害者も法定雇用率にカウントできるようになったと聞きました。精神障害者を雇用しても大丈夫でしょうか?
Answer
どのようなことに対して、「大丈夫でしょうか?」と心配しているのでしょうか?
ストレスの多い職場なので再発が心配、精神障害者を雇用したことがないので配慮の仕方がわからずに心配、業務の時間的ウエイトが大きいので心配、いろいろな心配があります。その内容によって、対処の仕方は異なります。また、「突然騒いだらどうしよう」、「危険があるのではないか?」などの偏見や誤解に起因した心配もあります。
心配なことは何かを整理してみましょう。そして、ハローワークに相談してみてください。トライアル雇用などの支援もしてくれます。偏見や誤解を解くための勉強会、必要な配慮は何かを学ぶことも大切です。精神障害者保健福祉手帳を所有している者を雇用する場合には、主治医による「就労可能証明」が必要とされています。この証明書も安心材料といえるでしょう。

コラム

精神障害者への配慮

 精神障害は長期にわたる障害であり、その症状は本人が自覚している場合もあります。本人にどういう配慮が必要なのかを、直接聞いてみるのもよいでしょう。その情報が不採用の理由やマイナス評価の材料とならないことを伝え、「できるだけ長く働けるように配慮をしたいから、聞かせてほしい」と聞くことが大切です。
様子を見て休憩室で休ませるなど過度な緊張をほぐしたり、緊張が続いて疲れたら、遠慮なく会社を休んだり、遅刻・早退・短時間を申し出てもよいことを何度でも本人に伝えましょう。新しい環境に慣れるのに時間がかかるので、あまり環境を変えないことも大切です。一般的に気が小さく、本人から言えない場合が多いことも知っておいてください。家族や主治医との連携を保ち、就労を支える体制づくりを行うことも必要です。
コラム終わり

Question 18
弱視の視覚障害者を雇用する予定です。拡大器を希望しているのですが、補助金が出ると聞きました。どうすれば、もらえるのですか?
Answer
「助成金」といい、都道府県障害者雇用促進協会に申請します。ただし、助成金で購入した機器は、その雇用者本人が使うことが条件です。助成金は納付金によってまかなわれており、厳密な調査がありますので、申請から入金までかなりの時間がかかります。その障害者が配属されて、業務が始まってしまう場合も少なくありません。余裕をもって申請してください。
支給されるまでは、高齢・障害者雇用支援機構の各駐在事務所などで、就労支援機器の貸し出しを利用するのもよいでしょう。貸し出し期間は六カ月となっていますが、延長もあります。購入する前に実際に利用してみて、就労に役立つものであるかどうかを調べることもできます。

図:助成金申請から支給までの事務手続きの流れ
図の説明
1、会社(事業主)からハローワークへ、意見書作成依頼
2、ハローワークから会社(事業主)へ、意見書交付
3、会社(事業主)から都道府県障害者雇用促進協会へ、受給資格認定申請(受注・契約前)
4、都道府県障害者雇用促進協会から高齢・障害者雇用支援機構へ、受付、申請書の点検、確認、申請書送付
5、高齢・障害者雇用支援機構において、受付・申請内容の審査、認定決定
6、高齢・障害者雇用支援機構から都道府県障害者雇用促進協会へ、認定決定通知書送付
7、都道府県障害者雇用促進協会から会社(事業主)へ、認定決定通知
以下略

Question 25
応募者が多いので、履歴書と障害者手帳の等級で書類選考したいと思います。履歴書や障害者手帳の読み方で注意すべき点はありますか?
Answer
履歴書や障害者手帳などから得られる情報には限りがあります。可能な限り直接会うことをお勧めします。また、障害者手帳の等級を選考の基準としたり、その人の能力そのものと考えることは非常に危険です。職能と等級は必ずしも連動していないからです。
障害者手帳は、子どものころに発行されたままで、現在はもっと進んでいる、あるいは逆に軽度になっている場合もあります。どの仕事をしてほしいのかを考え、等級にとらわれずに、その仕事で能力が発揮できるかどうかを見極めることが大切です。

コラム
「弱視だから、見えてるんだろ?」
ある女性は、〇・〇二の弱視です。書類はルーペを使って読むため、一度に三〜四文字しか視角に入らず、スピードも遅く疲れます。しかし、「弱視者は仕事ができない」と言われたくない一心で、かなり無理をしたそうです。FAXやコピー機のボタンの位置を覚え、座席の位置を記憶しました。弱視者として もっともつらい、目を使う仕事を依頼されても断らず、書類の角を折ったりクリップなどの目印をつけて対処したり……。
ところが、その頑張りは、周囲の理解を妨げるバリアとなっていたのです。「こんな文字ばっかりの書類、読めないよ! 工夫してよ」といった具合に、周囲の「弱視者は、あまり他の人と変わらない」という認識が、だんだんと彼女を袋小路に追い詰めていったのです。

 彼女は訴えます。「障害を等級で考えないでほしい。何ができないのかを本人に聞いてほしい。どうしてできないのか、どうすればできるようになるのかを、共に考えてほしい」と。苦手なことやどう頑張っても能力発揮ができないことが、その業務の多くを占めるのは苦しいことです。等級だけを見つめないで、その人自身の能力を見つけてほしいものです。
コラム終わり

欄外説明
障害者手帳は子どものころに発行され、等級も障害を負った当時のままのことが多い。
実際に会ってみると、訓練や治癒により、手帳の等級とかなり異なる場合があることがわかる。
欄外説明終わり

Question 26
履歴書で障害の状況を見ると、どの業務もできそうにありません。けれど、障害者を雇用する必要があります。採用は諦めるべきでしょうか?
Answer
ぜひ、会ってみてください。たとえ障害がなくても、実際に、「何かができる」新入社員は少ないものです。何ができるかを、これから見つけていく姿勢が大切です。また、今の業務でできるものがなければ、できる業務を創造することも一つの方法です。一つの業務を細分化してその一端を担わせてみる。できることを聞き、それを業務として取り入れてみる。工夫次第でいろいろな方法が見つけられるはずです。障害者を雇用するための、新しい業務分野が広げられるかもしれません。

コラム
ぜひ会いたい、電話で話したい!
世界のあちこちに支社・支店を持つある企業では、海外出向者を一手に引き受けてマネジメントするAさんというマネジャーがいます。時差もあり、やり取りはメールやファックスのみですが、Aさんは仕事だけではなく、海外に一人で出向している不安な気持ちを聞いてくれたり、個人的な悩みにも丁寧に対応してくれます。その文面は優しさと思いやりに溢れ、多くの出向者はAさんをとても頼りにしていました。
海外出向から戻ってきた社員の多くが、「Aさんはいらっしゃいますか? ぜひお礼がしたいのですが」と本社の人事部を訪ねてくるそうです。
「すみません。Aは在宅勤務です」
「え? 在宅勤務? では出社される日はいつですか?」
「出社はできません。半身麻痺の重い身体障害者なので」
みんな絶句するそうです。それでもこう言います。
「では、ぜひ電話でも。直接声が聞きたいので」
「無理でしょうね。彼女はろう者なので、耳も聞こえません」

 もし、Aさんがこの会社に入社を申し込んだとき、書類審査で障害の状況だけを見られていては、不採用だったでしょう。メールでやり取りし、そのコミュニケーション能力の高さから採用担当者が「Aさんならば、こうしたマネジメントができるだろう」とその能力を見抜いたからこそ、Aさんの能力が活かされているのです。
コラム終わり

p.323
「『はた・まことシリーズ』とは」
特例子会社の草分けとしてリクルートプラシスの設立から運営に関わり、日本経済団体連合会障害者雇用アドバイザー、高齢・障害者雇用支援機構雇用管理サポート事業協力専門家など数々の経験を持つ秦氏。今、その経験をもとに、さまざまな企業に、障害者雇用のアドバイスやコンサルティングを行っています。
真の障害者の立場と、障害者を雇用する経営者の立場、その両面を見据え、しっかりとしたビジョンと現実の厳しさ、そして人と人との関わりでなくてはならない優しさをあわせ持った企業経営、障害者雇用、マネジメントを行う秦氏のノウハウを、一人でも多くの人に理解し活用していただき、誰もが活き活き活躍してほしいと願い、このシリーズを立ち上げました。
本書は、2006年に刊行した『特例子会社設立マニュアル〜光と影を検証する』に続き、第2冊めとして発行いたします。
「『はた・まことシリーズ』とは」終わり

p.324〜325
「奥付」
協力
かじ なおみ
きむら もとよし
なかだ よしあき
みうら まこと
装幀・イラスト ケロミン
校正 吉田州吾・森住光世
制作協力 本田早苗・島上聡子・原鳳瑛・長谷川仁一
著者
はた まこと
慶應義塾大学商学部卒。労務管理論専攻。大学卒業後、日鉄商事株式会社を経て、株式会社リクルートに入社。営業経理部長、障害者雇用特例子会社設立準備室長を経て、1990年特例子会社株式会社リクルートプラシス(現・株式会社リクルートオフィスサポート)専務取締役に就任。独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者雇用アドバイザーを経て、2004年よりARM顧問として、就業不能者の職務復帰サポートプログラム、転職サポート事業を担当。日本経済団体連合会(日本経団連)障害者雇用アドバイザー、厚生労働省「難病の雇用管理のための調査研究会」調査・研究委員などを歴任。著書に「ケースで学ぶ障害者雇用促進支援講座」(通信講座テキスト)、『特例子会社設立による障害者雇用推進の功罪』、『採用試験の話』、『特例子会社設立マニュアル〜光と影を検証する』、監修『会社で使う手話』などがある。

はた・まことシリーズ 2
障害者雇用促進のための119番
  −この1冊で障害者雇用のすべてがわかる−
2007年5月初版第1刷
著者 秦 政
編集 春山 礼子
発行者 内山 早苗
発行所
東京都港区港南2−12−27 〒108-0075
  TEL 03-5769-0212(代表) FAX 03-5460-0240
http://www.ud-japan.com/
郵便振込口座 00150-6-358542
印刷所 株式会社シナノ
落丁・乱丁、その他不良な品がございましたら、お取り替えいたします。
お買い求めの書店か小社へお申しつけください。
2007 Makoto Hata & UD Japan Inc. Printed in Japan
無断転載・無断複写複製(コピー)を禁ず。
ISBN978-4-901173-18-6 C2034
「奥付」終わり

以上、本文終わり。