株式会社ユーディージャパン

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特例子会社設立マニュアル 見本用テキストデータ

視覚障がい者のためのテキストデータです。一部ですがご紹介いたします。本書をご購入していただいた方でご希望の方に、本書すべてのテキストデータのCDを添付しております。ご注文時にCD希望とお知らせください。

以下、見本用一部抜粋テキストデータです。

 ある日、経営会議で、来年からパートタイマーの社員も社会保険に加入することが決まった。
 人事部人材課の大野宏はこの連絡を受けて驚いた。社会保険に加入するということは、常用社員としてパートタイマーをカウントすることになる。パートタイマーは3,000人ほどいるため、新たに54名以上の障害者を雇用する必要があるのだ。大野は人事部で障害者雇用を担当している。弟が知的障害者だということもあり、障害者の就労には熱心だった。

 大野は早速人事部長の香川のもとに報告に行った。
大野 「香川部長、来年、あと54名の障害者の採用が必要です」
香川 「それは無理だよ! 高井さん一人でさえ、やっとの採用だったのに……」
 PP電機では毎年障害者を雇用している。昨年は車いす使用者の高井を採用した。そのとき、採用したのはたった一人だったが、それさえも、ハローワークに身体障害者の求人を出してからずいぶん経って、やっと紹介してもらえたのだ。
大野 「ええ、年々厳しくなってきましたね。ハローワークの担当者が、重度の身体障害者や知的障害者だったら、すぐに紹介できると言っていましたが……」
香川 「知的障害者? どんな職務で何をしてもらうんだ? 何もできないだろう」
 大野は弟のことを言われているようでムッとした。
香川 「第一、うちには雇用管理のノウハウなんてないよ」
大野 「では、思い切って知的障害者の特例子会社を立ち上げてはどうでしょう」
香川 「特例子会社? 何だい、それは?」

イラスト:香川部長は特例子会社という言葉に覚えがなかったようです。両手を前で組んで考えています。
イラスト終わり
ケース終わり

(1)親会社の雇用率にカウントできる特例子会社制度の概要 【27ページ】

 法人は、一定の割合で障害者を雇用する責務を負っています。民間企業の場合、常用労働者総数の1.8%相当以上の割合で障害者雇用の義務があります。障害者の雇用義務は個々の事業主にかけられるものですから、子会社で雇用した障害者は、親会社の雇用のカウントとは何ら関係はありません。
 しかし、次の要件を満たした子会社を設立すれば、この子会社で雇用された障害者を「親会社の雇用」としてカウントしてよい、という特例があります。その特例に基づき設立されるのが「特例子会社」です。

欄外:常用労働者
「雇用期間の定めがなく雇用されている労働者」および「一定の雇用期間を定めて雇用されている労働者であって、その雇用期間が反復更新され、過去一年を超える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇入れの時から一年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者」をいいます。

特例子会社の要件 【まるいち】親会社は子会社の意思決定機関を支配していること
・株主総会など
【まるに】親会社と子会社の人的関係が緊密であること
  ・役員の派遣、社員の出向など
【まるさん】子会社に雇用されている障害者が5人以上いること
【まるよん】子会社の全社員中、障害者が占める割合が20%以上であること
【まるご】子会社に雇用される障害者中、重度の身体障害者および知的障害者の合計数の割合が30%以上であること
【まるろく】障害者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有すこと
・障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置など
【まるなな】その他、障害者の雇用の促進および安定が確実に達成されると認められること

コラム: 特例子会社は、以前は親会社と子会社の1対1の関係でしたが、平成14年10月からは改正され、企業グループでの雇用率制度が適用になりました。特例子会社を有する親会社は、一定の要件を満たしているものとして公共職業安定所長の認定を受けた場合には、関係する他の子会社(関係会社)についても、特例子会社と同様、親会社と通算して雇用率制度を適用できます。

関係会社のグループ適用認定要件
*親事業主が関係会社の意思決定機関を支配していること
*関係会社と特例子会社との間の人的関係もしくは営業上の関係が緊密であること、または関係会社が特例子会社に出資していること

具体的には、次のいずれかの要件を満たしていること
【まるいち】特例子会社の役員のうち1名以上が関係会社から選任または特例子会社の従業員のうち1名以上が関係会社から派遣されていること
【まるに】関係会社から特例子会社に対し最低年間60万円程度の発注が行われている、または見込みがあること
【まるさん】関係会社が特例子会社に対し、100万円以上の出資、または関係会社が特例子会社の議決権の5%以上を所有していること
*親事業主が障害者雇用推進員を選任しており、かつ、当該推進員が関係会社と特例子会社に関しても障害者のための施設・設備の改善など、障害者雇用に関する義務を行うこと
*親事業主が、認定されたグループ内の障害者である労働者の雇用の促進および雇用の安定を確実に達成することができると認められること

図表:改正前と改正後の特例子会社と子会社の関係
改正前は、特例子会社は親会社と1対1の関係で、ほかの子会社とは関係を持てませんでしたが、平成14年10月1日の改正により、同じ親事業主に意志決定機関を支配されている子会社であれば営業上の関係、出資関係または役員派遣が行われていればグループとして適用されることを、親会社、子会社、特例子会社を円で囲み、それぞれのつながりを矢印で結ぶことにより図示しています。
図表終わり
コラム終わり

(2)特例子会社設立の流れ【30ページ】

 特例子会社設立までの大きな流れは、左の図の通りです。大変な手続きと思われますが、特例子会社は一部門を設立するのではなく1つの会社を立ち上げるのです。しかし、OJTや親会社、各支援機関の協力も得られることを考えれば、それほど困難ではないはずです。
 一般的な設立までの手順は、左のようになります。【まるいち】から【まるじゅうご】まで、ケースを交えて具体的に見ていきましょう。

* 34ページからの見出しの丸付数字は、左図の手順の丸付数字に該当します。
* 図表:特例子会社設立までの流れ(例)
特例子会社の設立までの流れを、企業と各支援機関の2つのグループに分け、そのやりとりを図示したもの。図中の【まるいち】【まるに】などの番号は、(2)特例子会社設立の流れ の説明と対応した企業側の手順を示しています。
ハローワークからの指導により、【まるいち】障害者雇用に係る検討、【まるに】特例子会社設立を検討をする。やじるし ハローワーク(高齢・障害者雇用支援機構、東京障害者職業センター、日本経団連、その他関連機関)への相談、特例子会社の見学 やじるし 【まるさん】特例子会社設立プランの策定、【まるよん】役員会への提案準備、【まるご】役員会承認。 やじるし ハローワークへ設立内容を報告する。【まるろく】設立準備室の設置。 やじるし ハローワークへ設立準備室設置を連絡。【まるなな】定款の作成・承認申請。 やじるし 公証人役場で承認。【まるはち】会社設立登記申請。 やじるし 登記所で審査を通ると、登記済証交付、代表取締役印鑑証明登録されるので、ハローワークへ子会社登記完了を連絡する。【まるきゅう】就業規則トップ決裁、【まるじゅう】就業規則等作成、【まるじゅういち】事業所設置届提出。 やじるし 各関係官庁によって受理。【まるじゅうに】障害者募集準備。 やじるし ハローワークへ障害者求人申し込み、地域の関係機関訪問。【まるじゅうさん】面接・内定。 やじるし ハローワークへ就職内定の連絡をする。【まるじゅうよん】入社(雇用障害者)。 やじるし 障害者にはハローワークの就職証明書の発行、ハローワーク子会社特例認定申請書等受付がされる。【まるじゅうご】特例子会社認定申請。 やじるし ハローワーク特例子会社現状審査が行われ、正式に設立となる。 図表終わり

ケース02

香川 「特例子会社? 何だい、それは?」
 大野は香川に特例子会社について説明した。実は、大野の弟も流通業界の特例子会社で働いているのだ。
香川 「そんな制度があるのか。それは何かと都合がいいなぁ」
大野 「ただ、特例子会社は親会社の継続的なサポートが必要で……」
香川 「わかった、わかった。次の役員会議で取り上げてみるよ」
 大野は特例子会社について詳しい資料を用意し、香川に提出した。

原野 「特例子会社の話なら知っているよ。上手く運営できるなら、それもいいな」
 役員会で香川の特例子会社の説明を聞いた後、原野は言った。原野は常務の一人である。PP電機で障害者雇用が進んでいる理由の1つに、原野の存在があった。
原野 「T製作所もやはり知的障害者中心の子会社をつくったそうだ。うちの会社もそろそろ知的障害者の雇用も考えなくてはと思っていたんだ。それによって、社会に活かされている企業であることを知り、我々ももっと社会貢献ができると思うんだよ」
 原野の理解を得られ、役員会議で検討した結果、特例子会社を立ち上げることに決定した。

イラスト:役員会議で香川人事部長は特例子会社の提案をしました。「それもいいなぁ」という原野常務の言葉に香川人事部長は意外そうです。
イラスト終わり
ケース終わり